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ため池の安全管理について(2023年12月・一般質問)

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◆藤田裕喜議員 次に、ため池の安全管理についてお伺いします。
 ため池については、防災対策としての耐震工事や改修工事、また決壊した場合の浸水被害などの危険性についてはこれまでも議会で議論をされてきましたが、安全管理、安全対策、特に転落による事故などの危険性という観点からはほとんど議論がありませんでした。また、国においては、農業用ため池の管理及び保全に関する法律が平成31年、2019年に制定されておりますが、この法律は、農業用ため池の情報を把握し、決壊や水害などによる被害を防止することに主眼があるため、転落などの事故の防止や安全面での管理に関する内容は一切含まれておりません。
 しかしながら、ため池に転落してしまったという事故については毎年必ず発生しております。釣りに来ていた親子が誤って転落した事故、子供同士で遊んでいて転落した事故、車ごとため池に転落したという事故、草刈りの作業中に誤って転落した事故など事故の状況も様々です。小さい子供だけでなく、大人も事故に遭っています。救助されて助かったという事例もあれば、残念ながら命を落としてしまったという事例もあります。
 農林水産省のまとめによれば、平成24年、2012年から令和3年、2021年度までの10年間で、ため池に転落するなどの事故は232件発生しており、251人が亡くなっています。平均すると毎年20件前後の事故が発生しており、毎年25人前後の人が亡くなっているという計算になります。亡くなった人の年代別割合で多いのは、70歳以上が44%、また20歳未満の割合も10%を占めています。事故は5月から9月にかけて多く発生しており、原因が分かっている場合では、釣りや水遊びなどの事故が22%と最も多く、次いで車両の事故が20%、管理作業中の事故が7%という順になっています。夏の暑い時期に水場に遊びに出かけた際に事故に遭ってしまうケースが多いということが容易に想像できます。この時期の報道でも目にする機会が多いと感じます。
 そこで今回は、市内にあるため池の安全管理の現状について、また、取り得る対策についてお伺いしていきたいと思います。
 まず、市内のため池での事故の状況についてお伺いします。
 これまでに市内のため池で転落などによる水難事故が発生したことがあるでしょうか。発生した事例があれば、どのような事故であったか、状況も含めてお知らせいただければと思います。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 ため池は、農業用水の確保を目的として先人がつくった人工の池で、本市の農業用水を豊川用水とともに支えております。また、ため池はかけがえのない地域資源であり、農業用水の供給のほかにも、洪水の調節、土砂流出防止、緊急時の水源、自然環境の保全など様々な機能がございます。
 市内のため池につきましては、転落事故などの水難事故の記録はありませんでした。また、愛知県に確認したところ、ため池の事故は県内で年間に1件から3件程度あると伺っております。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、ため池における安全管理の現状についてお伺いします。
 まず、大前提として共有しておきたいのですが、市内のため池には立ち入ることは禁止されており、釣りや水遊びなども合わせて禁止されているという理解でよいでしょうか。また、市内のため池の管理者は、すべて蒲郡市農林水産課という理解でよいでしょうか。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 市内のため池の管理者は蒲郡市で、農林水産課が維持管理を行っております。
 また、市が管理しているため池は58か所ありますが、全てのため池で立入禁止、釣り、水遊びなどは禁止になっております。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、ため池を囲うフェンスについてお伺いします。
 必ずしも全てのため池にフェンスが設置されているわけではなく、フェンスが設置されているため池と設置されていないため池があると思います。全てのため池にフェンスが設置されていない理由は何でしょうか。また、フェンスではなく、ガードレールやロープなどで囲われている箇所があるため池はないでしょうか、お伺いします。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 ため池の転落事故防止のための安全対策につきましては、ため池の立地条件や利用状況などを踏まえた安全対策が重要になります。そのため、ため池の周辺に民家があったり、隣接する道路が通学路に指定されている場合など、ため池に侵入や転落を防止するための安全施設を設置しております。
 安全施設の設置状況につきましては、58か所のため池のうち、52か所に侵入防止フェンスを設置しております。設置されていない6か所のため池は、集落から遠く、道路にも隣接していない、人が容易に立ち入ることができないため池となっております。
 また、侵入防止フェンスの内訳につきましては、金網フェンスが41か所、ガードレールが7か所、有刺鉄線2か所、擬木柵が1か所、トラロープが1か所になります。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、フェンスが破損しているかどうか、補修が必要かどうかという見回りや確認についてですが、これはどの程度の頻度で実施しているでしょうか、お伺いします。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 ため池の見回りにつきましては、日常的に行っており、異常箇所を発見したときは速やかに修繕などの対応を行っております。また、釣りなどの進入者を発見した場合は、口頭にて注意を行っております。
 ため池の点検につきましては、年に1回の頻度で職員による一斉点検を行っております。また、台風や大雨などの後には、堤体等の異常の有無を点検しております。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 多くのため池には管理用の出入り口が設置されていると思います。この出入り口の状況についてお伺いします。
 出入り口は、常に南京錠などによって施錠されているという理解でよいでしょうか。南京錠などによって施錠されていない出入り口があるかどうかお伺いします。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 進入防止フェンスが設置してあります52か所のため池のうち、出入り口に管理扉のあるため池は42か所になり、この管理扉にはすべて南京錠が付いております。
 なお、出入り口に管理扉のないため池は10か所になります。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、注意喚起の状況についてお伺いします。
 全てのため池に立入禁止を知らせる趣旨の看板が設置されているでしょうか。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 警告看板の設置状況につきましては、58か所のため池のうち52か所に立入禁止や危険注意といった内容の警告看板を設置しております。基本的に進入防止フェンスを設置したため池には、警告看板をセットで設置しております。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 国内でもため池の数が非常に多いことで知られている香川県ですが、丸亀市においては、ため池への注意喚起をする看板に「ため池は落ちるとはい上がることができません」と直接的な表現でその危険性が明記されています。また、落ちてしまった場合には、「暴れずに落ち着く。ずっと浮いて待つ」と指示があり、周囲の人にはむやみに飛び込まず、浮いて待つよう声かけをすることや、大声で周りの人に助けを求めること、また、落ち着いて119番に電話することが看板上で指示をされております。
 ため池の名称とともに管理番号も明記されており、転落した人を見つけた際に周囲の人が通報をしやすいよう配慮もされております。さらに、QRコードが表示されており、読み取ると、ため池の事故の危険性を紹介する動画が再生されます。単に危険性を喚起するだけでなく、具体的な行動を看板を通じて指示することで、現場の人の役に立つ看板になっていると思います。丸亀市の事例はぜひ参考にしていただければと思います。
 では、看板以外の手段で、例えばブザーが鳴るとか、回転灯が点滅するなどといった手段で、何か注意喚起をする設備や仕組みはあるでしょうか。また、監視カメラが設置されているため池はあるでしょうか。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 看板以外の手段で注意喚起をするブザーや回転灯などの設備や仕組みのあるため池はございません。また、監視カメラを設置したため池もございません。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、遠隔監視システムの導入についてお伺いします。
 自治体によっては、ため池の遠隔監視システムを導入している事例がございます。この遠隔監視システムについては、多くの業者が開発に取り組んでおり、様々な仕組みが構築されています。基本的な仕組みといたしましては、ため池に水位計を設置して、通信回線を経由してデータをクラウドに保存、蓄積し、データについては専用のウェブサイトやアプリでいつでも確認することができるといった形です。また、ため池の異常、水位の異常などが観測された場合、即座に警報の連絡ができ、現地の確認に行く手間が省けるだけでなく、避難などの情報発信も速やかに進めることができます。
 システムには、業者によって様々なバリエーションがあり、例えば、水位計を水中に固定して設置する方式の製品もあれば、水上に浮かべる方式の製品もありますし、水位計だけでなく監視カメラも設置するシステムもあります。
 警報の連絡についても、現地で警報灯を点灯させることにより、現地での警報を発することができるシステムもありますし、行政への連絡だけでなく、あらかじめ登録された地元住民への連絡に対応しているシステムもあります。
 電源については、太陽光とバッテリーを使用する場合やリチウムイオン電池を使用する場合もあります。
 なお、導入、設置にかかる費用も様々で、導入費用は1基当たり数万円から数百万円までとかなり幅があります。いずれの業者であっても毎年の維持管理費用が発生します。
 蒲郡市においては現状このようなシステムは導入されていないと思いますが、一考の価値はあるのではないか、検討の価値はあるのではないかと感じます。お考えをお聞かせください。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 遠隔監視システムを設置したため池はございませんが、水位計やカメラなどのICT機器を導入して水位やため池の状況を遠隔監視できるようになれば、職員が水位確認のために現地に行く必要がなくなり、管理の省力化につながります。
 また、夜間や豪雨時の現地点検には危険を伴っておりましたが、遠隔監視システムの導入により危険を冒さず点検できるようになるため、他市の導入事例なども含めて研究してまいりたいと考えております。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 自治体によっては、ホームページ上でもため池での転落事故やその危険性について注意喚起をしている場合がありますが、蒲郡市のホームページにはそのようなページは現状ございません。ホームページ上でもため池の危険性について注意喚起をしてもよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 また、現状、一般市民向けの注意喚起として、例えば、回覧板でチラシを回覧することや配布すること、あるいは広報がまごおりなどの手段で危険性を周知することなどは実施されているでしょうか。あわせてお知らせいただければと思います。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 広報につきましては、今までにも水難事故を未然に防ぐためにため池の注意喚起を周知しておりますので、今後も継続して行ってまいります。
 また、ホームページにつきましては、ため池や農業用水路の水難事故防止に関する記事を掲載して、注意喚起を図ってまいりたいと考えております。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、啓発活動についてお伺いします。
 冒頭にも御紹介いたしましたが、小学生や中学生、高校生など20歳未満のため池での事故も大変多くなっています。このような状況も踏まえ、児童生徒向けに学校などでため池の危険に関する啓発活動を実施しているでしょうか。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 学校につきましては、農林水産課から水難事故防止を文書で依頼しており、夏休みやゴールデンウィークなどの長期休業の前に全校指導、学級・学年指導の中で、海、川、池などの水辺の水難事故防止に関する指導が行われております。また、全国で水難事故があった場合にも、注意喚起の情報提供を行うように依頼しております。
 また、消防署の取組で、毎年「浮いて待て」講習会が実施されており、主に小学校5年生を対象にして水難事故防止のための実習を行っております。今年度の実績につきましては、市内13校のうち9校で実施され、総受講者は499名になります。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 大変細かな点までお知らせをいただき、ありがとうございました。安全管理の現状について大変よく理解することができました。
 万が一、ため池で転落事故が発生してしまった場合、安全管理の状況によっては、管理者である市の責任が問われる可能性もございます。過去の裁判例においても、管理に瑕疵があり、安全性を欠いている場合には、管理者の責任が認定された場合がありましたし、一方で、通常考えられる必要な対策、十分な対策が実施されていて安全性が確保されていれば、管理者に責任はないとした判例もございます。
 蒲郡市のため池も国家賠償法第2条1項の規定に該当する公の営造物であり、その設置または管理に瑕疵があった場合は無過失責任であるというのが判例の立場ですので、損害の発生に関して、過失の有無は関係なく、市が責任を負うこととなってしまいます。
 したがって、管理者としては、少なくとも管理上の瑕疵はない、安全管理は十分に実施しているといえる状況にしておくことが欠かせません。安全管理の現状を細かくお伺いしたのも、まさにきちんと基本的な対策が講じられているか確認をさせていただきたいと考えたからです。フェンスの設置、補修、点検、また施錠や注意喚起など基本的な対策については、十分な実施と漏れがないよう入念な確認をお願いしたいと思います。
 なお、農林水産省において、ため池の安全対策事例集がまとめられ、令和5年、2023年5月に公開をされております。冒頭に御紹介したような事故の現状と全国の市町村における安全対策の事例が紹介されているだけでなく、利用可能な国の補助金についても情報が掲載されています。ぜひ、蒲郡市においても参考にしていただきたいと思います。
 また、万が一の事故を防止することについても、私はやはり考えておく必要があるのではないかと感じます。この項目の最後に、事故防止のための提案をさせていただきます。
 冒頭にも御紹介したとおり、ため池に行く理由の大きな1つに魚釣りという目的があると考えられます。蒲郡市内のため池では釣りは禁止されておりますが、県内の他の市町村には釣りができるため池、釣りが禁止されていないため池も確かに存在していますし、そのような釣りができるため池を紹介しているWebサイトも幾つもございます。どんな魚が釣れるか、どんな道具を使うべきか、どんな釣り方がお勧めなのかなど、釣り好きな方々には大変参考になる情報が網羅されているように感じられました。
 また、これは昔話だと思いますが、昔の話としてよく聞くのは、蒲郡でも昔はため池で釣りができたというお話です。確かに何十年か前の私が小さかった頃でも、市内の山奥のほうのため池で釣りをして、オオクチバス、いわゆるブラックバスやブルーギルといった魚、しかも比較的大きなサイズの魚を釣り上げることができたといった話を身近でもよく聞いたことを思い出します。
 また、インターネットで検索をしてみると、最近でも市内のため池に釣りに出かけたという趣旨の投稿を、数は少ないですが見つけることができます。今でも蒲郡市内のため池で釣りができる、そう感じている方がいる、そう考えている方がいる、また、実際に市内のため池に釣りに出かけているという可能性が現在でもあるのではないかと考えられます。
 このような状況を踏まえると、どのように注意喚起をしても、どのように啓発を進めても、そして、本来は禁止されているものの、しかし、どうしてもため池での釣りに向かってしまう、臨んでしまうという人が一定数いるのではないかということをやはり想定しなければならないのではないかと感じます。注意喚起やフェンスの設置など安全管理を徹底することで、ため池に立ち入ってしまう人の数は減らすことができるかもしれませんが、全くゼロにすることはできないのではないか。万が一かもしれないが、ため池に立ち入ってしまう人もいるかもしれないという想定のほうが、残念ながら現実的ではないかと感じます。
 そこで、万が一の場合について、つまり何らかの理由でため池に立ち入ってしまい、転落してしまった場合、事故が発生してしまった場合について考えていく必要があると思いますので、ここでお伺いしていきたいと思います。
 一般社団法人水難学会という水難を専門的かつ学術的に研究し、現場での検証も経て、社会に広く発信することを方針とした団体がございます。ため池での事故が発生したときにニュース番組などでよく専門家として出演をされ、コメントをされている長岡技術科学大学大学院の斎藤秀俊教授が会長を務める団体です。斎藤教授は、ため池に転落してしまった場合、自力で脱出することは不可能であると断言されています。難しいとか困難であるというのではなく、不可能だと、できないとおっしゃっています。そして、自力でため池から上がろうとするのではなく、浮いて待て、すなわち、仰向けになって池に浮いて呼吸を確保した状態で救助を待つという対策を提唱されています。
 この水難学会では、ため池の事故に関する実証実験も行っています。この実証実験の様子はインターネットの動画サイトでも広く公開されておりまして、大の大人がため池ののり面から滑ってため池に転落し、のり面から実際にはい上がろうとするとどうなるかという様子が動画で紹介をされています。ぜひ皆様にも御覧いただければと思うのですが、大人であれば、ため池から簡単にはい上がれそうに見えるのですが、これが実際には全く上がってこられないのです。上がってこられないばかりか、反対に滑ってさらに深みにはまってしまうという状況が明らかになっています。
 また、特筆すべきは、この実証実験でモデルを務めている方は、消防に勤める現役の水難救助隊員であるということです。日頃から訓練、鍛錬をされているような方であっても、ため池の斜面を上っていくことはできないということがまさに証明されています。
 ほとんどのため池はすり鉢状に深くなっていく設計になっているため、見た目の水深は浅く見えますが、実際には数メートルの深さがある場合もあります。また、のり面は30度程度の傾斜になっていて、見た目では緩い傾斜で容易に上っていけるようにも見えますが、実際に上ろうとすると、水中ではなかなか進むことができません。これは、藻などがため池に自生し、繁殖していて、足が滑ってしまうこと、また、水中では浮力が働くため、深さのあるところでは斜面に足を固定することができないためです。靴を履いていても裸足でも状況は変わらず、どちらが上りやすいということはないのですが、コンクリート上で足が滑るという状況なので、裸足の場合だとどんどんと足が傷ついていくことになります。
 また、ため池に転落した人を救助しようとしたものの、救助しようとした人もため池に転落してしまうという事例も動画で紹介をされています。現実にため池に転落した人を目撃して、自分もため池に飛び込んで人命救助に当たったという事例も多くあり、首尾よく救助ができて自分も助かったというケースがある一方、救助もできず、自身も命を落としてしまうという事故も残念ながら発生をしています。
 また、転落した人にロープや棒をつかませて救助しようというケースもあるのですが、これでは救助しようとする人がため池に引きずり込まれて転落してしまう可能性があり、さらに被害を拡大してしまう可能性もあります。
 斎藤教授は、ため池に転落しても自分自身でため池の斜面をはい上がれるための工夫として、樹脂製のネットを斜面に設置することを提案されています。一たんため池に転落しても、何とか斜面までたどり着くことができれば、あとは設置されているネットを手でつかみ、斜面を上がり、ネットに足をかけて斜面を上がっていくことができます。このネットは、ため池転落対策用の救助ネットで、樹脂製で頑丈にできています。また、斜面にきちんと固定するだけでなく、おもりを下げて水中からも固定します。さほど細かい網目ではなく、幅はおおむね10センチ程度ですが、強度の強いものが推奨されています。ため池の斜面の全面に設置するのが望ましいことは言うまでもありません。既に様々なメーカーが開発、販売をしております。実際にため池に転落した人がこのネットをつかんで斜面を上がってくる様子も斎藤教授の動画によって紹介をされています。何も設置されていない斜面だと滑ってしまって全く上がれなかったのに対し、ネットが設置されている斜面では、ネットをつかむことによっていとも簡単にスイスイと上がってこられる、そんな様子を確認することができます。人命の救助に大変有用であるということは明らかです。
 そもそも立入りが禁止されているため池ではありますが、万が一、何らかの事情で立ち入ってしまい、そして万が一にも転落してしまった場合であっても、最悪の結果を防ぐことができますし、事故の防止につなげることは重要なことであると感じます。ため池に転落対策用の救助ネットを設置することについて、お考えをお聞かせください。

○青山義明議長 産業推進監。

◎永島勝彦産業推進監 転落した場合に脱出を補助する施設の設置につきましては、老朽化したため池の改修や耐震工事に伴う護岸改修の際に、転落した場合にのり面をはい上がりやすい張ブロックを設置しております。具体的には、白龍池や補陀ヶ池が整備済みとなっており、現在施工中の大久古池、下池、羽栗池についてものり面をはい上がりやすい張ブロックを整備する予定となっております。
 ため池救助ネットにつきましては、万が一転落してしまった場合の対策として有効であると考えております。他市の設置事例などを参考にしながら、ため池救助ネットの設置についても検討してまいりたいと考えております。
 以上です。

○青山義明議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 斎藤教授は、先ほどまでの質問にてお伺いしたフェンスの設置や施錠、注意喚起などの対策は、いずれもため池への立入りを抑えるための手段であって、万一立ち入ってしまった人の命を救う対策にはなり得ないと指摘しています。そして、立入りの制限はもちろん必要ですが、ため池での事故を防止するためには命を救うための対策も必要であるとおっしゃっています。ぜひとも御検討をいただければと思います。
 ため池の安全管理については、これまであまり注目されてこなかったかもしれませんが、本日御紹介しましたとおり、現実には人の命に関わる非常に重要な問題です。ぜひこの機会に再度の点検、確認をお願いするとともに、命を守る対策の御検討をお願いしたいと思います。この項目については以上で終わります。ありがとうございました。

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