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博物館の現状と今後について(2021年6月・一般質問)

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◆藤田裕喜議員 議長に許可をいただきましたので、通告の順に従い一般質問をさせていただきます。
 今回は、博物館の現状と今後についてお伺いしていきたいと思います。
 さて、5月18日は何の日か御存じでしょうか。5月18日は国際博物館の日という日で、国際博物館会議という博物館の進歩・発展を目的として1946年に創設された国際的な非政府組織が定めた記念日です。この国際博物館の日においては、毎年、世界共通のテーマが設けられ記念行事が行われています。2021年のテーマは「博物館の未来、再生と新たな発想」です。現在も続くコロナ禍の厳しい状況の中で、いかに博物館としての役割を果たすか、様々な課題がある中で博物館の役割が改めて問われているという問題意識です。
 日本では、この国際博物館の日に当たって記念シンポジウムが開催されました。オンラインの開催で私も参加させていただきましたが、コロナ禍における博物館の役割について、未来への可能性も含めて考える場で、国内の専門家が世界の事例を紹介しながら議論を深める大変すばらしい機会でありました。
 さて、蒲郡市にも博物館がございます。コロナ禍の厳しい状況が続く中で、博物館としてどのように役割を果たすことができるのか。また、未来を見据えて博物館にはどのような可能性があるのか。今後どのような役割を果たしていくべきなのか。また、そのために必要なことは何か、現状を踏まえながら議論し、考えていきたいと思います。
 では、まず1番、博物館の現状についてお伺いしていきたいと思います。最初に現状を考える前提として、蒲郡市博物館の歴史的な経緯についてお伺いしておきたいと思います。蒲郡市の博物館は、もともとは郷土資料館として昭和54年に開館し、その後、平成元年から博物館として改めてスタートしたと聞いていますが、郷土資料館として設置された経緯や当時の時代背景についてお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 蒲郡市では、昭和40年代においては、郷土史家の岸間芳松氏より寄贈された国指定重要有形民俗文化財「ひょうそくコレクション」をはじめとする灯火具資料や、教育委員会が市民の協力を得て収集しました民俗資料が、展示保管場所に恵まれないまま市民体育センターに眠っておりました。
 そのような状況を惜しむ人々から「市民のお蔵」となる郷土資料館の建設についての陳情書が出され、郷土資料調査や展示計画等を経て、昭和54年に「蒲郡市郷土資料館」として市民会館の西隣に開館いたしました。その後、一層の充実を図るための増改築計画が持ち上がり、昭和63年に西館を増築して展示の更新を行い、併せて可動壁を備えたギャラリーの供用を開始し、平成元年4月に「蒲郡市博物館」と名称変更して現在に至っております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、博物館の設置根拠についてお伺いします。また、博物館はどのような目的で設置され、どのような役割を果たすことが期待されているかお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 社会教育法において、博物館は「社会教育のための機関」とされております。また、博物館法には「国民の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とする」となっております。
 また、市の博物館の設置及び管理に関する条例におきましても、第2条に「郷土の考古、歴史、民俗及び美術工芸に関する資料を収集し、保管し、または展示して一般の利用に供し、併せて地方文化の発展に寄与するため、博物館を次のとおり設置する。」とあり、これに沿って活動をしております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 社会教育法と博物館法、それから博物館条例に基づいて設置されているとのことでしたが、具体的な事業としては、博物館条例の4条に「郷土資料の収集、保管、展示のみならず調査研究と文化財の保護及び活用にも取り組んでいく」と明記されております。では、現状この目的や役割がしっかり果たせているか一つ一つ確認をしていきたいと思います。
 まず、資料の収集についてお伺いします。博物館で収集、または購入している資料は年間どのぐらいの件数があり、どのぐらいの予算を充てているか、直近の実績をお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 令和2年度の新規資料につきましては、市民の方からの御寄贈によるものが64件ございました。資料の購入につきましては、現状、経常予算としてはゼロ円であり、購入を検討する資料がある場合に予算要求をしております。令和3年度につきましては、1件20万円を計上しております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、資料の保管についてお伺いします。収集した資料を保管する場所についてですが、現状どのような状況にあるのか。保管するために十分な余裕があるのか、ないのか。それぞれお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 資料の性質に合わせまして、施設内の収蔵庫、敷地内のプレハブ収蔵庫、また、元消防倉庫などの外部倉庫にそれぞれ保管しております。積層棚の設置や収納方法の工夫等で収蔵能力を高める努力をしておりますが、余力の厳しい状態が続いております。今後も外部倉庫の活用などに努めたいと思います。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、資料の展示についてお伺いします。博物館における資料の展示については、大きく分けて常設展示と企画展示とがあると思いますが、常設展示についてどのように管理をしているか。どの程度の頻度で展示替えをしているか。また、企画展についても、どのような頻度で開催しているかお知らせいただけますでしょうか。ほかにコーナー展示という常設展でも企画展でもない展示などがある区画や、図書・書籍のコーナーもあると思いますが、こちらの状況についてもお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 常設展示は、定番の資料を展示している文字通りいつ訪れても見られるものでありますので、頻繁に大きく変化させていくものではありませんが、土器・民具・古文書など、部分的に少しずつ毎年入れ替えているところもございます。
 企画展につきましては例年3回、大抵は夏休み・市民文化祭の時期及び年度末という頻度で開催をしております。
 また、企画展とは別に、1階の特別展示室の一部や2階ロビーにてコーナー展示を実施しております。企画展とするほどでもありませんが、ある程度まとまった分量の資料を公開しております。このように常設展・企画展・コーナー展示を組み合わせて効果的な展示施設となれるよう努めております。
 また、図書・書籍のコーナーは、ほかの博物館からいただいた図録のほか、まんが歴史全集など親しみやすいものも展示し、設置しております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 続いて、調査研究についてお伺いします。調査研究も博物館にとって、特に学芸員さんにとって非常に重要な職務であると思いますが、現状、調査研究に取り組まれていらっしゃるかどうか。また、調査研究の成果を博物館にどのように生かしていらっしゃるかお伺いいたします。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 埋蔵文化財の発掘調査や、郷土資料や文化財についての調査・研究などを行い、それらの成果を発掘調査報告書としてまとめたり、企画展やコーナー展示に生かしたりしております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、文化財の保護及び活用についてお伺いします。まず、文化財の保護についてですが、具体的にどのような取組をされていらっしゃるでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 文化財保護の具体的な取組につきましては、文化財の指定やその保護、それに関する補助金の交付などを行っております。古墳や城跡など史跡の管理につきましては、保護に取り組むとともに必要に応じて発掘調査を実施しております。そのほか「竹島八百富神社社叢」をはじめとします天然記念物の保全、災害等の被害状況の把握、良好な見学環境の維持などに努めております。また、未指定の文化財につきましても民具・古文書・美術作品など、本市にとって重要なものを調査・保管しております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 文化財の保護に関して、特に博物館の収蔵品の修繕についてお伺いします。文化財の保護といっても、ただ収蔵庫に置いておけばよいというものではなく、当然、経年の劣化は避けられませんので、必要に応じて収蔵品を順繰り修繕していくという必要があると思います。この収蔵品の修繕について、どのような頻度で実施し、また、どのぐらいの予算が充てられているかお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 収蔵品につきましては、経年劣化をできるだけ避けるために、環境変化に弱い資料につきましては、温度・湿度が安定した収蔵庫で保管をしております。現状では資料修繕のための経常予算は組まれておりません。
 しかし、絵画作品の絵の具の成分劣化など、避けて通れないものがありますので、資料の状態を鑑みて必要に応じて修繕を行っていくよう考えております。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 続いて、文化財の活用についてお伺いします。文化財の活用と一言で言っても、多様な活用の在り方があると思いますが、特に博物館の収蔵品について、具体的にどのような取組をされていらっしゃるかお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 常設展示関連につきましては、民俗展示室に塩田関連の資料としてカマス・押し車、また、織物関係の資料として足踏み織機を追加しました。歴史展示室では、古墳や遺跡からの出土資料を追加したほか、鵜殿氏関連の文献を上ノ郷城跡出土資料に入れ替えて展示をしております。また、本館と西館を結ぶ2階通路には、蒲郡の昔の写真をパネル化したものを追加展示しております。
 博物館所蔵資料や寄託資料のほかの館への貸出しとしましては、令和2年度は幸田町郷土資料館、安城市歴史博物館、東京国立博物館の3件がございました。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 文化財の保護と活用に関する予算についてですが、どのぐらいの予算であるか、直近の実績をお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 令和3年度につきましては、文化財保護事業費の総予算額541万6,000円のうち、主なものとして、コミュニティ事業助成金が250万円、指定文化財等保護事業費補助金が74万4,000円、指定文化財説明板設置工事費が89万1,000円等となっております。このほか国指定天然記念物「清田の大クス」や市指定天然記念物「三河地震による地割れ」の見学者用駐車場や案内看板等の経費として約35万円が計上されており、見学に訪れる方への便宜を図っております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 条例に基づく目的と基本的な役割について現状をお伺いしました。詳しくお話をいただきありがとうございました。大変よく分かりました。もう少し違う観点から、さらにお伺いしていきたいと思います。
 次は、入館者数についてです。ここ数年の入館者数の推移についてお知らせいただけますでしょうか。来館された方が市内からか、市外からか、また、個人か団体かなど、その内訳についても把握されている範囲で構いませんのでお知らせいただければと思います。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の入館者数ですけれども、年間約3万人から3万5,000人を推移しております。入館者数としては、歴史系の博物館の類似施設の平均約2万1,000人を回っており、館の規模、市の人口を鑑みますと、それほど少なくはない数字と考えております。入館者の内訳につきましては、バス等による団体利用よりは個人や家族等の数名単位による利用が多く、平時は市民のリピーターや近隣からの御来館、また、長期休暇や大型連休期間は市外からの御来館が多い傾向でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、博物館の予算額の推移についてお伺いします。直近数年間の博物館の予算額について、その総額の推移と主な歳出についてお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 人件費も含めました博物館費の予算額につきましては、近年は約6,000万円から8,000万円で推移しており、その振れ幅は修繕費や工事請負費の増減によるものになります。主な歳出としましては、会計年度任用職員を含めた人件費が約4,300万円、電気料が約400万円、企画展の開催事業費が約300万円、施設の維持管理委託料が約400万円となっております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、収入についてお伺いします。蒲郡市博物館では常設展示では入館料を徴収しておらず、また、企画展についても基本的には入館料を徴収していないと思います。したがって、博物館として外部から得られる収入は図録など図書の販売や講座の受講料、あるいは寄附であると思いますが、直近の状況はどうなっているでしょうか。また、御城印を本年度から開始するとも伺っていますが、これはどのぐらいの収入を見込んでいらっしゃるでしょうか、お伺いいたします。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館の歳入ですけれども、主なものは図録などの販売代金、講座受講料で、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の平成30年度における博物館使用料は9万円、図録などの販売代金と講座受講料が約31万円、そのほかに自治総合センターのコミュニティ事業助成金250万円となっております。
 御城印の販売につきましては、今年度が初めての頒布となりますが、約30万円の収入を見込んでおります。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、博物館の職員さんの状況についてお伺いします。蒲郡市の博物館には、どのような専門を有する方がどのぐらいいらっしゃるのでしょうか。職員さんの資格と皆さんの専門分野、また、職員数の推移についても併せてお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館の職員につきましては、正規職員が4名、うち学芸員が3名で、歴史・民族・考古の分野を担当し、そのほか非正規職員1名の5名体制で、ここ数年運営をしております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 3名の学芸員さんは、それぞれ御専門をお持ちということでしたが、それぞれの御専門の知見や専門性を業務に生かせているでしょうか。事務職と学芸員との担当業務は明確に区別ができているでしょうか。それとも区別なく様々な業務を兼務しているといったような状況でしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 学芸員は、学芸員としての業務だけではなく、施設管理の事務や文化財行政等も兼ねているため、明確な区分が難しいところはございますが、博物館行政と文化財保護行政は密接に関連しておりまして、現在の体制は、少ない予算で効果的に運営を行うのには適していると考えております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 博物館では館内での展示のほかに、出前講座や出張講座など博物館の外での事業も実施していると思います。そこで、ここ数年の館外での事業に関する実績をお知らせいただけますでしょうか。また、参加者からの感想や意見など把握されているものがありましたら併せてお知らせください。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の平成30年度の実績を申し上げますと、一般の方を対象とする出前講座が7件、児童生徒を対象とする出張講座が11件となっております。
 歴史を学び始めたばかりの小学校6年生向けの「土器をさわってみよう」という出張講座の感想文には、生まれて初めて1,700年前の弥生時代の土器に触ったことへの感動や、また、そこから自分でほかの遺跡や城跡などにも興味を持って調べてくれたこと等がつづられておりました。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 細かな事項にわたり現状を御説明いただきありがとうございました。この項目の最後にお伺いします。以上のような現状を博物館としてどのように認識されていらっしゃるでしょうか。また、どう評価されていらっしゃるでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館にあります郷土資料や市内に残る史跡・天然記念物は、地域の共有財産であります。これらを守り伝え、郷土愛が育まれる土壌づくりをするのが博物館の使命であると考えております。しっかりと耕し、肥料や水を適切に施していけるよう努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 分かりました。この点については、後ほどの議論でも触れさせていただきたいと思います。
 次に、2番の公共施設マネジメントにおける博物館の位置づけについてお伺いします。
 まず、博物館の建物そのものについてですが、現在の博物館の建物は昭和53年の建設で、既に40年以上が経過しておりますので、施設としては古くなっていると言わざるを得ないと思います。かなり頑丈な建物であるとは聞いておりますが、耐震化などの対応は既に十分であると考えてよいでしょうか。ここ数年のうちに対応が必要な大規模な工事や修繕は必要がないという理解でよいでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館につきまして、耐震診断結果では、耐震性能を示すIS値については十分な強度を保っております。
 また、直近の大規模な工事としましては、今年度、2階の空調設備を改修する予定となっております。また、昇降装置は40年以上経過し、部品も生産が終了しておりますので、数年のうちに更新を検討する必要がある状況と考えおります。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 次に、現在公表されている公共施設マネジメント実施計画に関してお伺いします。同計画においては、博物館は施設利用度が低く設備の老朽化が進行とあり、また、収蔵はほぼ限界まで利用されており、新たな資料の受入れが困難との課題が挙げられています。そして他施設との複合化を視野に入れること。また、展示機能の見直しを検討することが基本的な考え方として明記されております。この中の展示機能の見直しについてお伺いしたいのですが、これは具体的にどのような内容を意味しているのでしょうか。博物館の展示にどのような影響があるでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 現在の博物館の施設には、郷土資料の収集、保管、展示等の機能がありますが、常設展示については大規模な更新が少なく、また文化財など身近に触れられるような状態にはなっていないと認識しております。資料の収蔵に関しては外部倉庫を活用しておりますが、現在の施設では収蔵能力が限界に達しつつあり、新たな資料の受入れが困難になっております。これらの課題を解決するための方策を検討するため、「展示機能の見直し」と計画に掲載いたしました。
 具体的な内容が決まっているわけではございませんが、博物館ギャラリーの利用者や、観覧者からいただいたご意見などを参考に、ニーズを取り込んだ展示機能の見直しを図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 公共施設マネジメント実施計画については、今年度の見直しが予定されていると思いますが、この方針については変わりないでしょうか。また、現在の検討状況についてお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 総務部長。

◎平野敦義総務部長 現在の公共施設マネジメント実施計画につきましては、平成28年度に策定をしております。この計画は5年ごとに見直しを行うこととしており、今年度が計画策定から5年となりますので、今年度末までに計画の見直しをする予定でございます。
 計画の見直しにあたりましては、部長級の職員で構成する公共施設見直し検討委員会の委員と、大学の先生、NPOの代表者、シンクタンクの研究員といった有識者とで構成する公共施設マネジメント実施計画見直し検討会議を設置し、内容の検討をしているところでございます。個々の施設の取組につきましては、今後の検討内容となっております。博物館につきましても、方針を変更するかどうかは今後検討をしてまいります。
 また、今議会で、補正予算で提案をさせていただいております社会教育4施設将来ビジョンの策定の際にも検討をしてまいりたいというように考えております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 では、3番の今後の博物館の可能性について考えていきたいと思います。これからの博物館の役割が市民にとって学びの場となる、蒲郡の歴史や文化を改めて知っていただく、再発見をしていただく、蒲郡のよさを知っていただく、というところだけでは、私は少し物足りないのではないかと感じます。市民にもっと利用していただく、もっと関わっていただく、もっと参加していただく、といった形で、市民をさらに巻き込んでいくような在り方が求められているのではないかと思います。そうすることで、さらに市民にとって身近で親しめる博物館、楽しめる博物館の姿が実現していくのではないでしょうか。具体的に提案をしていきたいと思います。
 まず、博物館が所蔵する資料の利用についてです。博物館管理規則の8条に資料の利用という規定があります。この規定は教育委員会の許可のもと、学術調査研究の目的であれば博物館所蔵の資料を利用してもらうことができるという内容です。初めに、この制度の概要についてお伺いできればと思うのですが、どのような目的、趣旨の制度で、どのような方にどのように利用されているのか。件数も含めて実績についてお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館管理規則第8条は「資料は、学術調査研究のため館内で利用させることができる。」というものです。複写資料や画像での閲覧では精度が足りず、直接資料に当たって熟覧・模写・拓本・実測などを行う必要があるような場合が該当いたします。
 卒業論文や学校の授業におけるレポート作成など、学業における研究のほか、郷土史研究をされている個人の方の申請も受けております。新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の平成30年度では7件の利用がございました。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 この制度ですが、誰でも利用できるという理解でよいでしょうか。研究者や学生さんだけでなく、一般市民もこの制度を利用することができるでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 目的が学術調査研究であれば、一般の方も利用可能でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 この資料の利用の制度ですが、実績が大変少なく、私は非常にもったいないと感じます。こうした制度があること自体、恐らくほとんど知られていないため、利用されることも少ないのではないかと思います。もちろんホームページにも記載はございませんでした。まずは、こうした制度があるということを知っていただく必要があるのではないかと思います。
 続いて、博物館の運営と市民の参画についてお伺いしていきたいと思います。
 博物館法20条には、「公立博物館に博物館協議会を置くことができる」との規定があります。同法によれば、博物館協議会とは、博物館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、館長に対して意見を述べる機関であり、その委員は教育委員会が任命することとなっています。これは公立博物館を民主的に運営していくために設けられた制度で、施設の運営に市民参画が必要であるという認識のもと、市民と施設をつなぐための場として博物館協議会が設けられています。
 公立博物館である蒲郡市博物館も、博物館協議会を設置することができますが、現状、博物館協議会は設置されておりません。その理由は何でしょうか。また、今後設置する考えはあるでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 本市の博物館の場合、文化財所蔵者・元教員・学識経験者から構成される文化財審議会を設置し、そこにおいて前年度の事業報告や現年度の事業計画案の協議などを行い、企画展や教育普及事業、資料の収集・保管などに関する御意見を伺っております。委員は全員蒲郡市民でもありますので、現在のところ別途設置する考えはございません。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 もう少し、この議論を深めていきたいと思うのですが、現在、博物館と市民が関わる場として、古文書を読む会や蒲郡SLを守る会、また清田の大クス愛好会があり、長年多くの市民の皆様に御参加をいただいております。こうした言わば目的別に分かれたような会だけでなく、博物館を応援する、支援する、サポートする目的で、さらに多くの方に参加していただけるような幅広い市民を対象とした下位組織を新たに設けてはどうでしょうか。ほかの博物館では、博物館友の会といった名称で活動をされています。入場料が有料の博物館であれば、友の会に入会すると割引を受けられるといったメリットがある場合もございますが、蒲郡市では入館料は無料ですので、代わりに友の会の会員向けの講座や講演会などのイベントを実施すること。会報紙の発行や会報紙の紙上で会員同士が寄稿することなどを通じて交流できるようすることなどの特典を提供することができると思います。ただし、私は必ずしも会員であることによるメリットはなくてもよいと考えており、あくまで博物館を応援する、支援するための組織として博物館のいろいろな活動に協力する個人と法人の集まりという位置づけでよいのではないかと考えています。会費については、徴収してもしなくても、どちらでもよいと思います。
 今から25年前の平成8年6月の蒲郡市議会定例会においても、鎌田篤司議員の質問に対する答弁で、当時の教育長が友の会の設立について、大変前向きに答弁をされていました。当時は博物館の増改築計画が議論の俎上にあり、その中での新たな取組として提案されたものでしたが、増改築計画の凍結とともに、この友の会についても話題にならなくなってしまいました。私は大変残念であったと思います。市民と地域とともに歩む博物館の新たな在り方、市民が参画する新たな博物館の在り方という趣旨を実現するための、1つの場とすることができるのではないかと私は考えており、検討の価値は十分にあると思います。ぜひ再検討をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 藤田議員が先ほどおっしゃったように、現在「蒲郡SLを守る会」とともにSL写生大会、SL写真とミニチュア機関車展、合格のお守り配布などのイベントを行ったり、また、清田の大クス愛好会と年2回程度作業などを行っております。
 市民の皆様とともに歩むことの重要性は博物館としても感じております。市民参加の組織の形態につきましては「友の会」として一括する方法もございますが、個別の目的に沿って有志の方にお集まりいただいたほうが、市民の皆様各自のお志に合わせた、きめ細やかな連携ができるのではないかと思っております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 市民の参画に関して、もう1点、御提案をしたいのですが、博物館の事業や運営、活動をサポートしてくれるボランティアを募集してはどうでしょうか。既に各地の様々な博物館でボランティアが多様な活動を展開しています。先ほどのSLを守る会や清田の大クス愛好会もボランティア活動の一環であるとは思いますが、それにとどまらず資料整理の補助やデータベースへの入力作業、展示のガイド、イベントの企画や広報を担う場合もあり、博物館によって多様な在り方が既に実績としてあります。市民参加の機会を広げるだけでなく、担当する職員さん、学芸員さんとの重要なコミュニケーションの場、交流を通じたお互いの学びの場となり、参加する市民だけでなく、職員さん、学芸員さんの意識の変化にもつながっていく機会となり得ます。検討の価値は高いと思いますが、いかがでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 資料整理の補助やデータベースの入力作業などは、貴重な文化財の取扱いに関する習熟度の問題や、資料の所有者・寄贈者等に係る個人情報を保護する観点との兼ね合いから実施が難しいところもございます。
 しかし、展示に関するサポートにつきましては、これまでも広報などを通じて、レコードやおもちゃ・雑誌・古い写真・戦時中の資料などの提供協力を呼びかけ、様々なものを御提供いただいております。その際に、併せてその方の知識や経験等もご教示いただき、展示に生かしてまいりました。今後も資料を媒介にして多くの皆様の御協力を仰ぎたいと考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 続いて、定期刊行物など、広報媒体に関する提案です。現在、蒲郡市博物館では、企画展や収蔵品の図録は発行していますが、紀要など定期的な刊行物は発行されておりません。また、博物館の広報のための情報誌なども特に発行されていない状況です。ホームページに展示の情報などは掲載されているというだけの状況です。博物館について知ってもらうということだけでなく、展示や事業について理解してもらうこと、あるいは学芸員さんの調査研究の発表の場として定期的な広報媒体を作っていくことは、これからの様々な可能性を広げることができる非常に重要な取組ではないかと思います。毎月出すようなものである必要はなく、年に4回とか年に2回とか、あるいは年に1回でもよいと思います。私は何より、こうした媒体を作ること。場をつくることが大事であると考えています。定期的な刊行物についてのお考えをお聞かせください。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 これまで発掘調査の報告書や、考証・解説を付した写真集などを企画展に併せて刊行しております。今までの調査で分かった研究成果を盛り込み一年に一度の紀要を発行するといった固定的なものよりも、展覧会の実施に即したタイムリーな形で刊行物を制作し、成果を示してまいりたいと考えております。
 以上です。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 続いては、子育てに関する博物館の取組についてお伺いします。多様な世代の人に博物館を訪れてもらうためには、子育て世代に対する配慮も書かせません。特に設備面の対応が不十分ですと、訪れてもらうきっかけすら失われてしまいます。まずは、子育て世代に配慮した博物館の設備についてお伺いします。現状はどのような状況でしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館の玄関に、現在はベビーカー1台の貸出しを実施しております。これらは日本博物館協会からの寄贈によるものでございます。そのほか、昨年度のトイレ洋式化工事の際に、多目的トイレの壁面におむつ替えができる台を設置しております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 博物館という場は静かに展示を見るところというイメージもあり、小さな子供が遊んだり、はしゃいだりするような場ではないように感じられ、必ずしも小さなお子さんを連れて行きやすい場とは考えられていないのではないかと思います。この点については、実際はどうでしょうか。小さいお子さんを連れた家族の来館はあるでしょうか。また、博物館では子供連れの来館について、どのようにお考えでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館の屋外に蒸気機関車と客車が展示されていることもありまして、それを目当てにご来館されることが多いようでございます。蒲郡SLを守る会と共催で行っておりますSL写生大会やミニチュア機関車展には多くの御家族連れが来館されております。
 そのほかにも夏のおもちゃコーナーや、正月の昔の遊びコーナー、ひなまつりの着付け体験など小さいお子さんにも楽しんでいただけるイベントの開催にも近年力を入れております。ミニチュア機関車の走行を楽しんでいるお子さんなどは、食い入るように見ておられます。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 併せて、バリアフリーに関する取組についてもお伺いします。エレベーターは設置されているとのことでしたが、障害者向けの対応があるエレベーターでしょうか。また、多機能トイレの設置、点字による解説、介助犬の同伴の可否など、現状はどのようになっているでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館のエレベーターにつきましては、展示ケースの運搬も兼ねているため26名用と広いものであります。障害者向け対応のボタン・手すりの設置はもちろん、降りる際に背面を確認できるよう正面に鏡が設置されております。
 そのほかのバリアフリーの取組としましては、玄関にて車イス2台の貸出しを実施しております。こちらも日本博物館協会からの寄贈によるものになります。また、多機能トイレについては1基設置されており、昨年度の工事において暖房便座のウォシュレットに更新しております。また、点字による解説はございませんが、盲導犬や介助犬につきましては同伴可能でございます。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 最後に、4番の博物館のあるべき姿について考えてまいりたいと思います。
 まず、現在も拡大が続く新型コロナウイルス感染症の影響についてお伺いします。新型コロナウイルス感染症は博物館にも大きな影響を与えていると思います。昨年の一時期は閉館を余儀なくされ、来館者数も大きく減少したのではないかと推察します。新型コロナウイルス感染症によって、博物館にはどのような影響があったか。開館の状況や入館者数の増減、また、企画展など展示の影響についてお知らせいただけますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 議員御承知のとおり、令和2年3月の全国一斉学校の臨時休業に併せ、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、博物館も休館となりましたので、その分開館日数・入館者数とも減少いたしました。開催中だった企画展「明治の地籍図を読みとく」につきましては、会期半ばで中止となってしまったため、借用資料については御返却した上で、再編して常設展示に組み込む形で、再開後にも引き続き開催させていただきました。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 職員さんの業務に対しては、どのような影響があったでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 文化財行政につきましては、平常どおり行っておりましたので、特に大きな影響はございません。また、この機会を利用して、普段なかなか手が回らなかった館内資料の整理などに注力をしておりました。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 来館者や市民の皆さんには、どのような影響があったでしょうか。また、開館を望む声や、あるいは開館することについての苦情などもあったでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 休館を残念がる声は若干ございましたが、新型コロナウイルス感染症が原因ですので、目立った苦情等はございませんでした。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活や社会の在り方を見直す契機でもあったと私自身は感じていますが、コロナ禍における博物館の役割については、どうお考えでしょうか。コロナ禍において、博物館はどのような役割を果たすことができると考えていらっしゃるでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 2回目以降の緊急事態宣言下では、自宅近隣における運動や散歩に準ずる健康の維持に必要な場合として予約制での開館が実施されております。これは単に体の健康面だけではなく心の健康も含まれると考えております。今年5月に文化庁長官から出されました「文化芸術活動に関わるすべての皆様へ」という声明でも「文化芸術活動は、断じて不要でもなければ不急でもありません」と述べられています。適切な感染症対策を講じ、コロナ禍においても社会から切り離されることなく、活動を持続してまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 大変すばらしいお考え、また、大変重要な視点であると思います。この点について、さらに深めたいのは、人口8万人のまちの博物館とは、一体どうあるべきかということです。一度に何千人も来場があるような企画展を実施するわけでもなく、国宝に指定されるような文化財を所蔵しているわけでもなく、また、観光客がたくさん訪れるわけでもない公立の博物館とは、一体どうあるべきでしょうか。蒲郡の博物館は何を目指すのかお考えをお聞かせいただけますか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 本市の博物館では「ひょうそくコレクション」や「梵鐘」といった国指定重要文化財も収蔵・展示しております。それらはもちろん貴重な資料でございますが、一方で、地域で必要とされ、地元でつくられ、地元で用いられてきた漁業・三河木綿・塩田といった産業の資料は、蒲郡市の特徴を伝える履歴書であり、蒲郡市にとって重要な文化財でございます。8万人という人口規模・予算規模を鑑みつつ、先人が歩んできた歴史や近隣地域とのつながりを知ることができるかけがえのない資料を次世代に守り伝える場でありたいと考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 具体的にお伺いしたいと思うのですが、今後注力していきたいこととしてお考えのことはありますでしょうか。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 博物館は、地域と連携し、企画展や季節のイベントなどを通して、ファミリーで楽しめ、市民が身近に感じる「明るく楽しい博物館」を目指しております。
 そのためには、郷土愛の育成・文化財保護の拠点化・学校教育との連携・企画展の充実及びギャラリーの活用等に努めてまいります。
 体験を伴うイベント、スタンプラリーなどによる周辺の博物館との連携も進めていきたいというように考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 その上で、来館者にどのような価値を提供したいのか。どのような影響を与え、どのような気づきをもたらしたいかお考えをお聞かせください。

○大向正義議長 教育部長。

◎嶋田丈裕教育部長 蒲郡について深く知り、地域への関心や愛着を抱く蒲郡市民を育むことが、蒲郡における文化の発展にも寄与するものと考えております。
 以上でございます。

○大向正義議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 大変よく分かりました。非常に重要なお答えをいただいたと思います。ぜひこのお考えを堅持していただきたいというように思います。
 まとめに代えて、私の個人的な体験から、私が期待する博物館の役割について、改めて問題提起をさせていただきたいと思います。私は実は、小さい頃は考古学者になりたいと考えておりました。きっかけは小学校3年生のときに家族旅行で佐賀県の吉野ヶ里遺跡を訪れたことです。当時はまだ発掘作業が始まった頃で、発掘作業の途中のところも見学させてもらうことができました。竪穴式住居や物見櫓も復元されていたのですが、それより強烈に印象に残っているのは、覆屋の中にずらりと並んだ甕棺と、その中に残されていた人骨でした。吉野ヶ里遺跡の有名な首なし人骨です。2000年の時を超えて生々しい現場を目の当たりにした、人の生死というものを目の当たりにしたということが強い衝撃として残っています。現地に行って、本物に触れたからこそ得られた経験であっただろうと感じています。私は旅行から帰りまして、すぐに蒲郡市の図書館に行って、吉野ヶ里遺跡に関する本を借りられるだけ借りて読みあさりました。さらに、ほかの古代史に関する本も、また借りて読んで、さらにその日本の歴史には飽き足らずに世界の歴史にも興味を持つようになりました。特に興味を持ったのはエジプトの歴史でしたが、いろいろな本を借りては読んで、借りては読んでを繰り返しておりました。図書館の児童室の歴史コーナーに通いつめているような感じだったと思います。そしてそれだけではなく、改めて蒲郡市の博物館に行ってみて、蒲郡市内にも弥生時代や縄文時代の遺跡があったということを知りました。既に小さい頃から博物館には何度も行っていましたが、このとき、蒲郡の古代史を再発見したという感じだったのです。自分の郷土にも、こういう古い歴史があったのだと分かって、とてもうれしく、誇らしく感じました。そしてさらに愛知県内のほかの市町のいろいろな博物館や遺跡を訪れたり、旅行先の博物館や遺跡も訪れるなど、どんどんと古代史にのめり込んでいきました。
 私が吉野ヶ里遺跡を訪れたのが平成3年のことでしたが、翌年の平成4年には、何と蒲郡市博物館に吉野ヶ里遺跡展がやってきたのです。こんな偶然があるだろうかと、今振り返って思うわけですが、吉野ヶ里遺跡の現地で見た銅カンや管玉、銅鏡だけでなく、首なし人骨も来ていました。私も家族で行きまして、お土産も買ってきておりました。1年ほど勉強した後だったので、私の見方も全然違いました。自分で説明ができるほどになっていましたし、学んだことを改めて一つ一つ確認するような感覚でした。家族旅行で行ったところのものが、再び自分の地元の博物館で見られるということに興奮もしましたし、大変感激したということをよく覚えています。
 その後、私は残念ながら考古学の道を究めるということは断念しましたが、今でも歴史や古代史、考古学に関する興味・関心というのは、ずっと引き続いております。個人的な体験で恐縮ですが、私はやはり博物館が提供する価値というものは、こういうところにあるのではないかと思います。それはすなわち知的好奇心を刺激し、探究心を動かし続けていく。この動かし続けていくということです。私の場合で言えば、吉野ヶ里遺跡をきっかけとして郷土蒲郡の歴史に改めて出会い、さらに地域の歴史を知り、日本の歴史、世界の歴史へと学びを広げていく。学びを続けていくということです。博物館や遺跡を通じて得られる知識は、あくまでごく一部です。吉野ヶ里遺跡展にしても、決して吉野ヶ里遺跡の全体像、あるいは弥生時代の全体像を見せるものではありません。全体像を見せるものではありませんが、だからこそもっと詳しく知りたい、もっと詳しく調べてみたいと感じるのであって、そのきっかけを提供すること、その場を提供することこそが、まずは重要であると思います。
 そして、さらに重要なことは、ここから先だと思うのですが、博物館での学びをさらに広げて深めていく。この広げる、深めるプロセスに博物館にもぜひ関わってほしい。博物館の力も貸してほしいと思います。きっかけを提供するだけでなく、もっと先に進むための手助けをしていただきたいと思います。
 蒲郡市博物館は、本日も御答弁をいただきましたとおり、地域の共有財産である蒲郡の郷土資料と史跡、天然記念物を守り伝えていくことが使命ですが、そうであるならば、もっと、もっとここにこだわって、蒲郡の歴史に触れるきっかけを提供するだけでなく、学びを広げ深めていくためのサポートも提供していただきたい。蒲郡市の歴史を知るためには、蒲郡市の博物館が一番である。蒲郡市の博物館以外にないということが、もっと多くの市民に理解されるべきですし、そのために博物館を使っていただくべきであると思います。博物館の基本的な役割、原則にこだわっていく、そのプロセスの中で改めて市民と出会い直していく。そういうことが、もう少し私は蒲郡の博物館には必要なのではないかと思います。それは先ほど御提案申し上げました資料を利用させることでもいいですし、学芸員さんとの対話でもいいと思います。あるいは、新たに友の会を設立することや定期刊行物を発行していくということでもいいと思います。博物館という存在、博物館という場に市民がもっと関わっていくこと。あるいは市民をもっと巻き込んでいくことで、地域への関心や郷土への愛着を感じ深めていくということにつながっていくのではないか。また、博物館から市民への流れが一方通行ではない、双方向性が生まれるような循環するような流れ、これがもっと強く大きくあるべきではないかと思います。そうすることで施設利用度が低いなどと言われることのない多くの市民に開かれた、さらに多くの市民の皆さんに存在価値を感じていただけるような愛される博物館になっていくと思います。
 しかしながら、本日のお話を踏まえると、そのための環境が整っていない。まだまだ不十分であるように思えてなりません。特に資料の購入の予算がない。資料を保管しておく場所が足りないという現状は、博物館の重要で基本的な機能すら十分に果たせていないということを示しています。また、人員も十分とは言えず、人手はもっと必要ではないかと感じます。ハードもソフトも両方が必要で重要です。必要な予算はちゅうちょなく使うべきであると私は思います。蒲郡市に博物館が存在することの価値と重要性、意義と役割について改めて考えていただく。改めて理解していただくということをお願いして、今回の質問を終わります。どうもありがとうございました。

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