何をしているの?

自殺対策について(2023年3月・一般質問)

  • LINEで送る

◆藤田裕喜議員 それでは、議長の許可をいただきましたので、通告の順に一般質問をいたします。
 1、自殺対策についてお伺いします。
 まず、(1)これまでの経緯と現状についてです。初めに、最新の令和4年版の自殺対策白書を参考に、全国的な傾向について共有をしておきたいと思います。
 令和4年版自殺対策白書によれば、日本国内における自殺者数の動向は1998年、平成10年以降、14年連続で3万人を超える状況でしたが、2012年には3万人を下回り、その後は減少が続き、2019年、令和元年には約2万人まで減少しました。しかし、2020年、令和2年には前年よりも増加し、2021年、令和3年も前年とほぼ横ばいという状況でありました。特に2020年、令和2年以降については、新型コロナウイルス感染症の影響が見られます。具体的には女性の自殺者が増加していること。特に女子学生の自殺率の上昇が見られること。また、男女を問わず29歳以下の若年層の自殺者数が増加していること。さらに同居人がいて仕事がある女性の自殺者数が増えていること。仕事があるかどうかにかかわらず、同居人がいない男性の自殺者数が増加していること。そして無職の女性の自殺が増えていることなどが挙げられています。ただし、これらはいずれも全国的な傾向でありまして、蒲郡市の傾向とは異なるところもあろうかと思います。
 そこで、蒲郡市における状況についてお知らせいただけますでしょうか。傾向や背景、年齢や性別、家族構成などについて、また、経年による変化や新型コロナウイルス感染症の影響が見られるかどうかについても、併せてお知らせいただければと思います。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 平成29年から令和3年までの5年間における本市の自殺者数は65人で、男性が38人、女性が27人でした。年別では、平成29年が12人、平成30年が16人、令和元年も16人、令和2年が12人、令和3年が9人でした。
 本市の特性としましては、60歳以上の無職で家族と同居の女性の自殺者数が最も多く11人、背景としましては、身体疾患による病苦、それが原因で鬱状態となり自殺という危機経路が考えられております。ただし、これは生活状況別に見て代表的と考えられる経路の一例でございますので、必ずしも唯一の理由というわけではないと思っています。
 本市で自殺者数が一番多かった時期は平成28年の21人で、以降、多少の増減はありましたが、令和3年は9人と減少しています。コロナ禍における自殺者数につきましては、全国や愛知県では増加傾向であると聞いておりますが、本市では減少傾向にあるのかなと考えております。
 以上でございます。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 数字については注意深く見ていく必要があるかと思いますが、減少傾向にあるという点については、これまでの施策の成果と捉えることもできるかと思います。
 自殺対策、自殺予防において特に大きな役割を果たすのが、命の門番とも言うべきゲートキーパーを育てるゲートキーパー研修です。この実施状況についてお伺いします。既にゲートキーパー研修を開始して一定の期間が経過しているかと思いますが、まずは現状についてお知らせいただければと思います。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 平成29年から市職員を対象にゲートキーパー養成研修を毎年実施しており、以降、未受講の職員に受講するように働きかけをしております。令和元年度から4年度までの直近4年間の受講者の実人数でございますが154人でございます。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 令和元年6月の議会では、フォローアップの研修も行っているとの御答弁がありましたが、どのような状況でしょうか。また、その後の経過についても、併せてお知らせをいただければと思います。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 市職員は年度内に研修を2回受講しておりまして、1回目の受講から数カ月後にフォローアップ研修として実施しております。アンケートの結果から、通常の業務におきまして市民の悩みの傾聴、そうした方を見かけたときには福祉課など相談窓口へつなぐなど、受講者のうち63%が自殺対策の視点を持つことを意識しながら対応しているという回答を得ております。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 ゲートキーパー研修については、職員の皆様向けだけではなく、市民向けや民生委員向けなど、いろいろな方に向けて実施をされていると思います。ぜひ今後も継続して実施していただくようお願いしたいと思います。
 次に、相談窓口の連絡先を記載したカードについてお伺いします。2020年、令和2年から配布をいただいていると思いますが、どのような機会に配布しているか。また、トイレなどに設置をしていただくようお願いしたいと思いますが、どのぐらいのお持ち帰りがあるか把握されていればお知らせいただければと思います。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 まず、具体的な持ち帰りの枚数でございますが、特にこれは把握しておりませんが、置いてある場所は、先ほどトイレということで御例示していただきましたが、カードは減っておりますので、その状況を見まして、そのたびに補充して啓発に努めております。
 トイレ以外でございますが、福祉課の窓口にカードを設置しまして、また、ゲートキーパー養成研修の受講者にも配布いたしております。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 カードの内容についてですが、更新または変更はされているでしょうか。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 カードの内容でございますが、特に当初より更新や変更はしておりません。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 現状のカードの内容でも大きな問題はないと私も考えておりますが、今後増刷する機会などがありましたら、ぜひ記載内容の見直しをお願いしたいと思います。よりつながりやすい相談窓口、より的確な対応ができる相談窓口など、新しい相談窓口も開設されているという可能性があるからです。見直しの時点でベストの内容にしておくべきであると思います。窓口によっては対応できる曜日や時間帯が変更されてしまうこともありますし、電話がつながりにくくなってしまっているなど、窓口の状況が変化してしまう場合があります。そうなると必要なときに十分な対応ができない可能性も生じてしまいます。
 私が以前、NPOの活動の中で聞いたエピソードには、こんなお話がありました。NPOの活動で出会った方ですが、その方は自殺しようと思って固く心に決めていたということだったのですが、ふとどこかで相談窓口の電話番号を記載したカード、まさに蒲郡市でも作っていただいているようなカードを、もらっていたということを思い出しまして、たまたま財布かポケットに入っていたと。それを見つけてカードに記載された相談窓口に上から順番に電話をしてみたということでした。1つ目の窓口はつながらない。2つ目の窓口もつながらなくて、やはりだめかなと思って、3つ目の窓口につながらなかったら諦めよう、自殺しようと思って電話したら、何と電話がつながって話ができて、結果として自殺を思いとどまることができたというお話でした。その方は、「あのときに電話がつながったから、今こうしてここに生きていられるのですよ」と言っていらっしゃいました。まさにカードが最後の命綱であったということです。たった1枚のカードだけでも人の命を救うことができる。それだけ重要な役割を果たすことができるという貴重な実例であると思います。万一のこと、つまり希死念慮、自殺したいと悩んでいる人の視点から考えてみますと、カードに記載された相談窓口の電話番号に順番に電話をかけてみて、つながるかどうかということが、まさに結果に直結するということですので、やはりできるだけ、いつでも電話がつながるような窓口を記載しておくことが望ましいと思います。ぜひ、随時見直しをしていただくようお願いしたいと思います。
 次に、自殺防止対策策定委員会についてお伺いします。
 蒲郡市の自殺防止対策計画において、この委員会の設置が定められております。どのようなメンバーで構成され、どのぐらいの頻度で開催されているか。また、委員会においてはどのような議論が出ているか御紹介いただけますでしょうか。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 自殺防止対策計画委員会でございますが、民生委員児童委員協議会、警察署、保健所、総代連合会など11人の委員で構成されておりまして、年1回開催しております。
 過日開催されました委員会におきましては、本市の自殺者の特徴である高齢者の自殺対策における実施状況や子供への啓発リーフレット配布などについての質問や感想などが挙げられております。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 さて、3月という時期についてですが、3月は自殺対策の上でも大変重要な月として知られております。3月は1年のうちで最も自殺が多い月であるからです。その背景として考えられるのは、多くの企業で年度末を迎え、繁忙期で忙しくすることから休息の時間が取れないということ。あるいは業績が思わしくないことや、借りているお金が予定どおり返せないことなど、厳しい問題を抱えてしまう人が多くなってしまうことが挙げられます。さらには就職や転職、異動や転勤、進学や引越しなど生活環境が大きく変化し、ストレスを受けやすいということも考えられます。特に中高年の男性の自殺が増加する傾向にあることもよく知られています。また、本日は月曜日ですが、1週間のうちで月曜日が一番自殺者数が多いということもよく知られています。正確に言えば、月曜日に発見される自殺者が多いということですが、週末を経て再度やってくる平日である月曜日を迎えられない。迎えたくないという状況が自殺に追い込んでしまっていると考えることができます。3月は自殺対策強化月間として指定され、相談や啓発の活動が全国で展開されています。
 そこでお伺いします。3月の自殺対策強化月間に合わせて、何か市で予定されている取組はあるでしょうか。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 3月でございますが、愛知県から送付をされます啓発物品を福祉課の窓口で配布いたしております。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 了解しましたが、もう少し何か積極的に取り組んでもよいのではないかと思われまして、少し残念に感じています。先ほど御紹介いただいた相談窓口のカードを市のイベントで配布することや、庁舎内や公共施設にポスターを掲示すること、また、ゲートキーパー研修を実施することなど、既存の施策を活用するだけでもいろいろな取組が考えられます。
 また、3月は自殺対策の強化月間であると話題にすることによって、相談窓口につなげていくことができる場合もありますし、相談しやすい環境づくりにもつながっていくことだと思いますので、ぜひ来年度以降は何らかの施策を検討していただきたいと思います。
 続いて(2)自死遺族についてお伺いします。
 蒲郡市の自殺防止対策計画の中では、その他の施策4として、自死遺族に関する取組について記載がございます。どのような取組があるか、また、具体的な内容についてもお知らせいただけますでしょうか。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 自殺未遂の方やその家族、自死遺族の方が相談に来られた場合、福祉課でお話を伺いまして、その上で愛知県等の相談窓口がございますので、そちらの紹介を行っているという状況でございます。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 ほかの自治体を見ますと、自治体独自で自死遺族に関する取組をしているところは、確かに少ないという現状があります。ただ、自治体のホームページに「自死遺族の方々へ」、「大切な方を亡くされた方へ」といったタイトルのページがあり、専門の相談窓口や自助グループやNPOなどの民間団体の連絡先を紹介している自治体があります。また、愛知県が作成したパンフレットを掲載しているという自治体もありました。蒲郡市のホームページには、現状このようなページはございませんが、ぜひ御検討をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 確かに先ほど、藤田議員が言われたとおり、蒲郡市のホームページにおきましては、自死遺族のページはございません。こころの相談窓口として、電話で相談できる窓口を御案内しておりますので、自死遺族関係のリンク先等につきましても、掲載を検討してまいりたいと考えております。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 自殺の防止だけに特化した政策ではなく、自死遺族支援も含めているということは非常に重要な点ですので、ぜひお願いしたいと思います。
 ただ1点、自死遺族の方々に向けたメッセージや案内を発信する際、また、ひいては自殺対策の全体のメッセージの発信に当たっては、少し配慮いただきたいと考えている点があります。それは「自殺を亡くそう」とか、「自殺をゼロにしよう」、「自殺を防止しよう」、「食い止めよう」といった表現についてですが、これが自殺した人たちを否定しているような印象がある。そういうニュアンスがあるという点です。自殺をなくすことやゼロにすること、防止すること、食い止めることは確かに大事なことですが、しかし、一番自殺を食い止めたかったのは遺族の方々であって、一番自殺をゼロにしたいと考えていたのも遺族の方々であったと思います。しかし自分たちにはできなかった。ゼロにはできなかった、止められなかった自分たちが悪かったのだ。一番身近にいたはずなのに、なぜ止められなかったのかと、自分自身を責め続けてしまう。結果として遺族の方々に大変辛い思いをさせてしまいます。ただでさえ身内を自殺で失って悲しい思いをしているにもかかわらず、さらに追い打ちをかけるような、さらに遺族の方々を追い込むようなことはあってはならないと思います。実際に自殺をなくそうとか、自殺をゼロにしようというポスターやチラシは世の中にあふれておりますが、そうしたものを見るたびに辛い思いをさせてしまっているのではないか。そういう現状があるのではないかと思います。
 自殺対策は生きるための支援であって、いかにして自殺まで追い込まないか。自殺を選択してしまうまでのプロセスの中で困難や課題を解決していくか。専門家につなげるなどしながら、問題を解きほぐしながら、一つ一つ、いかにして解決につなげていくかというところが一番重要です。生きるための支援になるいろいろな施策がうまくいって、功を奏して、結果として自殺者数が減っていくということですので、例えば、数を目標として掲げることは余り適切ではないと言えますし、支援の施策を充実させていくことのほうが数を掲げることよりも重要ではないか。数を強調していくことよりも大事なのではないかと私は考えています。
 また、今後の自殺防止対策計画の策定には、遺族の方に関与をしていただくということについても、ぜひ御検討いただければと思います。遺族にしか分からないこと、また、遺族だからこそ提言できることもあると思います。
 それから自死遺族の方々に共通する悩みとして、身内が自殺したことを誰にも話せない、誰にも共有できないという状況もあります。体験をシェアできるような場の必要性を感じています。講演会など、市民向けの啓発の機会も必要です。これらのことは私も自死遺族の方々から実際にお話を伺って、気づかされました。自死遺族の方々への支援については、見過ごされがちな一面であると思いますので、ぜひ行政からもサポートをしていただけたらと思います。参考にしていただければと思います。
 次に、(3)NPO法人との連携についてお伺いします。
 国内で自殺対策に取り組んでいるNPO法人は、最近ではとても多くなってきておりますが、その中でも草分け的な存在で、国の自殺対策基本法の制定に大変大きな貢献をされたNPO法人ライフリンクという団体があります。日本の自殺対策のトップランナーとも言うべき存在で、代表の清水康之さんのお話については、私も何度も聞きに行った経験がございます。
 このNPO法人ライフリンクさんが、SNSによる自殺相談窓口を開設されています。このSNSによる自殺相談窓口は、「生きづらびっと」という名称で厚生労働省の補助も受けている事業です。相談者からお話を聞き、受け止めるというだけでなく、実際の支援につなげていくという窓口です。SNSを使うことで電話による相談だけではカバーしきれない層へのアプローチが可能となり、さらに自殺対策のセーフティネットを広げる役割を果たしています。言うまでもなく、全国どこの方でも相談が可能です。具体的にどのような運用がされるかという点についてですが、仮にこのSNSの相談窓口に蒲郡市民の方が相談されたとしたら、本人の御了解をいただいた上で、ネットではないリアルの市の相談窓口につないでいただくということができるようになります。SNSの相談窓口がつなぎ役となって市のいろいろな支援施策につなげていただけるということです。
 ただし、このSNSの相談窓口から相談された市民の方を市の相談窓口につないでいただくためには、連携の協定を締結する必要があります。SNSの相談窓口をしているNPO法人ライフリンクと蒲郡市との連携協定です。近隣の自治体、あるいは愛知県内ではまだ事例はないようですが、神奈川県座間市、新潟県南魚沼市、福島県郡山市などでは既に実績がございます。自治体側の費用負担はありません。蒲郡市においても協定の締結について、ぜひ御検討いただきたいと思いますが、考えをお聞かせください。

○稲吉郭哲議長 健康福祉部長。

◎宮瀬光博健康福祉部長 自殺防止対策計画でも「誰も自殺に追い込まれることのないまち蒲郡」を目指しております。したがいまして、SNSなどの相談窓口の幅を広げることは意味のあることではないかと思っております。藤田議員御提案のNPO法人につきましては、既に協定を締結している自治体の状況を確認しながら研究してまいりたいと考えております。
 以上です。

○稲吉郭哲議長 藤田裕喜議員。

◆藤田裕喜議員 ぜひお願いしたいと思います。自殺者数は一時期に比べれば相当な数減少をしておりますが、それはあくまで年単位の数字、毎年の数字であって、累積の自殺者数、これまで積み重ねられた自殺者の数は増え続けているというのが現状です。毎年2万人もの人が自ら命を絶っている現状がある。それは例えば、交通事故で亡くなる人よりも圧倒的に多い数ですし、30代までの若年層における死因のトップはいまだに自殺であるという現状もあります。まだまだやるべきことは多いですし、できることはたくさんありますので、一つ一つの施策を積み重ね、全体として施策を充実させていくことに尽きると思います。今回も様々御提案を申し上げましたが、今後の展開に期待をさせていただきたいと思います。私もできる限りの尽力をしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

  • LINEで送る