◆藤田裕喜議員 では、議長に発言の許可を頂きましたので、通告の順に従い一般質問をいたします。
まず、1、労働者協同組合について、お伺いします。
労働者協同組合とは、働く人が出資し事業に従事し経営に参加するという働き方を実現する組織の在り方です。株式会社においては出資者は株主、事業に従事するのは労働者、そして、経営者が経営を担い、それぞれが分業していますが、労働者協同組合においては労働者が出資し、事業に従事し、経営に参加するという形を取っています。このような働き方を協同労働といいますが、従来の株式会社とは根本的に異なる働き方です。
さらに、労働者協同組合は単に仕事をする、事業に従事するというだけでなく、新たな仕事起こしやよい仕事に取り組むことを通じて、より暮らしやすい地域づくりにつなげていく、そのような可能性も持っています。
労働者協同組合による地域づくりは、国内外を問わず、既に多くの実績があります。労働者協同組合法の第1条には、この法律の目的が掲げられています。少し長いですが読み上げます。「この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とする。」とあります。
重要な点は3点ございます。まず冒頭ですが、生活との調和を保ちつつという点は、これはワーク・ライフ・バランスを実現することを指しており、また、意欲及び能力に応じて就労する機会という点はディーセントワークの実現を指しています。労働者協同組合が法制化される背景には、ワーク・ライフ・バランスとディーセントワークが十分に確保されていないということが現状の問題意識として認識されていることが分かります。
なお、ディーセントワークとは、よく誤解されているのですが、単にやりがいのある仕事といった程度の内容を指すのではなく、働きがいのある人間らしい仕事、より具体的には自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした全ての人のための生産的な仕事のことを言います。それは権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事を意味します。また、そのためには、全ての人が収入を得るのに十分な仕事があることも必要です。これは、ILO(国際労働機関)による定義ですが、このディーセントワークが実現されることは、労働者協同組合にとって非常に重要な価値を持っていると言えます。
次に、労働者協同組合にとって最も重要な三つの基本原理が明確に定められています。それは、第1に組合員が出資すること、第2に組合の事業には組合員の意見を反映させること、第3に組合員が事業に従事することです。そして、究極的な目的として、多様な就労機会の創出と地域における多様なニーズに応える事業が展開されることによって、持続可能で活力ある地域社会づくりを進めていくということを述べています。労働者協同組合にとって最も大切な要素の全てがこの法の第1条に集約されているということです。
株式会社日本総合研究所の小島明子さんは、協同労働には三つの意義があると指摘しています。
1点目に、協同労働は、地域社会で必要とされる仕事を担い、地域の課題を解決することを主たる目的としているため、協同労働が広がることは、課題の解決や地域の活性化につながるということです。
2点目に、多様な人材が活躍できる機会の創出につながることです。子育てや介護などの事情や障がいや病気を持っていることを理由として、一般の企業ではその能力を十分に発揮できない人もいます。しかし、協同労働では、働き方や仕事内容を組合員同士が話し合って決めていくことになるため、多様な働き方が可能な環境をつくりやすいというメリットがあります。協同労働を実践することで、多様な人材が活躍できる場が増えていけば雇用機会の創出にもつながっていくと考えることができます。
3点目に、主体的な働き方を実現できることが挙げられます。協同労働では、組合の経営方針や働き方などを組合員が話し合って決めていくことになるため、単に雇われるだけでなく、主体者として組合に関わることになります。主体的な働き方ができることは、やりがいを持って仕事ができることにつながるかと考えられます。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、今、働き方が見直される機運が高まっていると感じます。育児や介護への配慮にとどまらず、ワーク・ライフ・バランスが重視される時代にあって、テレワークや在宅勤務、時間単位での有給休暇や幾つかの仕事を掛け持ちすることなど多様な働き方が必要な時代になってきていると感じますが、その中で労働者協同組合は今後さらに大きな役割を果たしていく可能性があると思います。
労働者協同組合は日本における制度としては新しいものですが、世界における歴史を踏まえると、19世紀の中頃から現代につながる組織の萌芽を見ることができ、およそ150年に及ぶ歴史があると考えることができます。日本における労働者協同組合を取り巻く歴史については、大きく二つの流れがあります。
一つは、1949年の緊急失業対策法に始まる失業者対策事業に従事する労働者の組織からその出発点を見出すことができます。この労働者の組織、全日本自由労働組合は、当初は労働者としての待遇改善を求める活動を展開していましたが、1970年代後半の失業対策事業の新規就労の廃止を受けて、地域社会に貢献するよい仕事に取り組む方針に転換します。その後も様々な模索を経て、とりわけイタリアの協同組合運動の在り方に大きな影響を受け、1993年に日本労働者協同組合連合会、ワーカーズコープ連合会に発展しました。
もう一つは、1968年に設立された生活クラブ生活協同組合の活動です。生活クラブ生協は、消費材、いわゆる商品の共同購入から始まった生活協同組合ですが、この生協の組合員である主婦が主体となって、地域に根差した、地域に必要な、地域のための事業が模索され、実際に起業されてきました。生活クラブ生協から始まったのがワーカーズコレクティブという労働者協同組合で、生活クラブ生協の配送業務などの請負を皮切りに様々な分野に展開しました。
起点となった活動やこの間の経緯は異なりますが、どちらも働く人が出資して事業に従事して経営に参加するという働き方は共通しています。協同労働という在り方が時間をかけながらも着実に根づき広がってきたと言うことができると思います。
しかしながら、労働者協同組合については法的な位置づけがありませんでした。そのため1990年代から法制化の運動が進められてきました。2001年には初めて国会で協同労働が取り上げられ、2008年には議員連盟が発足し、2017年になってようやく法制化の動きが具体化し、2020年、議員立法という形で全会一致にて成立しました。その後2年間の準備期間を経て、2022年10月に労働者協同組合法が施行されました。
この間、協同労働の理念を持って活動する団体は労働者協同組合としての法人格を持つことができなかったため、NPO法人や企業組合といった既存の制度を利用するか、もしくは任意団体として活動することを余儀なくされてきました。法制化が実現し、労働者協同組合としての法人格をようやく取得することができるようになりました。
厚生労働省によれば、令和6年、2024年2月19日時点で労働者協同組合という法人格を取得している団体は全国で73法人、愛知県内では3件です。事業も多岐にわたっており、これまでワーカーズコープやワーカーズコレティブの皆さんが取り組んできた事例の多い清掃やビルメンテナンス、運送・配送業をはじめ、高齢者の介護や生活困窮者の支援、子育て支援や障がい者福祉の事業はもちろんのこと、家事代行、キャンプ場の経営、成年後見の支援や子ども・高齢者の居場所づくり、カフェの運営や地元産品の販売、イベントの企画・実施、空き家の管理など実に多岐にわたる事業が起業され展開しております。私自身も法制化される以前より様々な労働者協同組合の働く現場を見てまいりました。既に現場でも多様な分野の事業に取り組まれております。
法律が施行されてからまだ1年半という状況ですので、今後、件数が大きく増加し、事業の幅もますます広がっていくことが想定されます。また、蒲郡市内ではまだ労働者協同組合は設立されていませんが、今後、この新しい働き方、新しい地域づくりの在り方の一つとして広がってくる可能性は十分にあります。ぜひとも皆様の理解を深めていただき、労働者協同組合を支援・応援していただければと考えております。
それでは、順次お伺いしてまいります。
まず、(1)労働者協同組合と労働者協同組合法についてです。
まず、蒲郡市として労働者協同組合について、どのように捉えているか、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○青山義明議長 産業振興部長。
◎池田高啓産業振興部長 昨今では、少子高齢化が進む中、介護、子育て、地域づくりなど幅広い分野で多様なニーズが生じており、担い手も不足している中、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題に取り組むための新たな組織が求められております。藤田裕喜議員の御説明でもございましたように、労働者協同組合は、その活動を通じて多様な就労機会が創出されるとともに、これらの地域課題の解決の担い手として大いに期待され、ひいては持続可能な活力ある地域社会の実現に寄与するものと理解しております。
しかしながら、制度の意義や既存の法人制度との明確な違い等が分かりづらいことから、こうした活動を行おうとする方々に適した周知やサポートが実施できるよう、本市におきましても職員自体の理解もさらに深めていく必要があると感じております。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 次に、労働者協同組合を担当する部署について、お伺いします。
市民の皆様から労働者協同組合に関する問合せがあった場合など、労働者協同組合に関する事務はどの部署が担当することにっているでしょうか。
○青山義明議長 産業振興部長。
◎池田高啓産業振興部長 労働者協同組合法の管轄は厚生労働省であるため、国や県からの情報収集の窓口としましては、労働行政を担う産業振興部産業政策課となります。
市民の皆様からのお問合せの窓口といたしましても、所管としては、基本、産業振興部産業政策課でございますが、市民活動団体や福祉関連団体等からのお問合せによりますと、市民生活部協働まちづくり課や健康福祉部福祉課等が担当することもございます。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 さきにも述べたとおり、労働者協同組合法の第1条に掲げられている目的は、多様な就労の機会を創出することを促進すること、そして、地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進すること、そして、これらを通じて持続可能で活力ある地域社会の実現に資することです。
就労機会の創出という点で考えれば、確かにこれは労働政策です。また、労働者協同組合においては、組合と組合員が労働契約を締結するため、労働法制が全面的に適用されることとなりますが、この点から考えても労働政策の一環であると捉えることも決して不自然ではないと思います。
また、さらに労働者協同組合の事業を通じて働き方を変えていく、新しい働き方を広げていくということも可能です。しかし、その目指すところは、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することであることを考えると、労働政策とは少し異なる点もあるように感じます。また、従来の労働政策の先にあるような産業を振興するとか、経済成長を促進するとか、そうした観点とは大きく異なるところに力点があるように思います。
また、労働者協同組合はNPO法人と同じく非営利であることが前提となっています。事業や活動を通じて地域を支えていく、地域をつくっていくという側面を重視していくのであれば、その在り方は限りなく市民活動に近いNPO法人などと近いものとして考えていくべきであるようにも感じます。その意味では、労働部局が担うより、市民活動を担当する部局において担当すべきではないかとも感じられます。
御答弁にありましたとおり、国においては厚生労働省ですし、愛知県庁においては労働局が所管をしておりますが、県議会の議論の中では、労働部局ではなく、県民文化局、市民活動や社会活動を担当する部署が担当すべきではないかといった指摘もございました。他の都道府県、市町村の例を見ても、労働部局が担当している場合もあれば、市民活動の部局が担当している場合もあり、ここの判断は分かれているのかなという印象があります。
どの部署が担当するかということは確かに大きな問題ではありますが、私としては、この制度を理解し、しっかり支援してくだされば、どこの部署が担当してもよいのではないかと考えています。実際に問合せに対応したり、具体的な施策を展開したりしていく中では、部署間の連携も大事になってくるのではないかと感じますが、担当部署についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○青山義明議長 産業振興部長。
◎池田高啓産業振興部長 藤田裕喜議員の御質問にもございましたように、現在、愛知県としましては労働者協同組合に関する事務を労働局が担当しており、労働者協同組合の活動を通じた多様な就労機会の創出という観点からも、本市におきましては産業振興部産業政策課が担っておりますが、市民活動の促進や支援、その他様々な分野での活躍も期待できることから、今後につきましては市民生活部協働まちづくり課をはじめ、状況に応じて本市庁内の関係各課と連携をしながら適切に対応していくことが必要であると考えております。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 ぜひ連携しながらの対応をお願いしたいと思います。
次に、(2)制度の周知や広報について、お伺いします。
労働者協同組合については、まだまだ広く知られていないという段階であると思います。NPO法人のように、その存在が広く認知されているわけでもありません。多くの人に知っていただくということがまずは重要であり、必要なことであると思います。
そこで、まずは取組の第一歩として、市のホームページにおいて労働者協同組合に関する情報を紹介するページを作成していただけないかと思います。他の自治体でも多くの事例があり、簡潔な説明文と厚生労働省の特設サイトや都道府県の制度紹介のページへのリンクを掲載している場合が多いですが、可能であれば、どういった特徴があって、どういった活動に向いているのか、どういった事業に適しているのかといった基礎的な紹介も含めて掲載していただけるとよいのかなと思います。そうしたところから理解を広げていくことが必要であると思いますが、お考えをお聞かせください。
○青山義明議長 産業振興部長。
◎池田高啓産業振興部長 本市におきましては、愛知県からの啓発、藤田裕喜議員の御提案を受けまして、市公式ホームページにおいて制度紹介ページの掲載を開始したところでございます。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 ホームページについては、早速の御対応をいただきましてありがとうございました。
私も、拝見いたしまして基本原理、備えるべき要件、特色と簡潔ながらも労働者協同組合の要点を明確にまとめて記載いただいておりますし、相談窓口も御紹介いただいていますので、具体的な行動につなげていくこともできるのかなと感じました。また、今後、施策を展開されていく中で、このページもさらに充実されていくことを期待したいと思います。
もう一点、制度の周知や広報に関連して、市の職員の皆様にも、この労働者協同組合について知っておいていただく、理解しておいていただくことが重要であると感じています。
先ほどの御答弁の中に、労働者協同組合と既存の法人制度との明確な違いが分かりづらいという点の御指摘がありました。私も確かにそのとおりであると思います。現実として、冒頭にも御紹介したとおり、労働者協同組合が法制化される以前から、協同労働の理念を持ちつつも、ほかの法人形態によって事業は運営されてきており、それは例えば企業組合である場合もあれば、NPO法人や株式会社を利用している場合もありますし、あるいは個人事業主であるという場合もあります。既に長年にわたって既存の制度の中で多くの仕事を起こし事業を運営されてきているわけですから、新たに労働者協同組合という法人格を取得することで何が変わるのか、これまでとどう違うのか明確には分かりづらいということは確かにあるだろうと思います。そして、恐らく労働者協同組合の法人格を取得したところで、外見的にも、事業の実態としても、これまでとは大きく変わらないであろうと思います。
労働者協同組合と他の法人組織との最も明確な違いは、労働者協同組合法の第3条に規定された基本原理を有しているかどうかです。その基本原理とは、冒頭にも御紹介したとおり、第1に組合員が出資すること、第2にその事業を行うにあたり組合員の意見が適切に反映されること、第3に組合員が組合の行う事業に従事することです。特に組合員の意見反映については、労働者協同組合の定款における絶対的記載事項とされており、組合において、どのように各組合員の意見を集約し事業に反映させるのか、具体的に、かつ明確に定めておくことが求められているという点です。
しかし、これは、いわば内部の意思決定に係る部分ですので、やはり外見的には分かりづらいだろうと思います。ただ、労働者協同組合には既に多くの実例がありますので、具体的な現場の事例や事業を学びながら理解を深めていただくということができると思います。まずは関わりが生じるであろう産業政策課や協働まちづくり課、また福祉課の皆様には特に一通りの知識として知っておいていただきたいと思いますし、できれば、やはりこれはまちづくりに関わることですので、全ての職員の皆様にも知っておいていただきたいと思います。
そこで、お伺いします。
労働者協同組合に関する職員向けの研修を実施することについて、どのようにお考えでしょうか。お考えをお聞かせください。
○青山義明議長 会議終了の時間が近づいてきておりますが、本日の会議時間は、議事の都合により、あらかじめこれを延長いたします。
産業振興部長。
◎池田高啓産業振興部長 現在、愛知県においても、労働者協同組合法及び協働労働について普及啓発事業を推進しているところであり、自治体職員の理解促進の取組も実施されております。令和5年8月には、県内市町村職員向けにオンラインによる説明会が実施され、本市からも産業政策課及び福祉課から担当職員が参加させていただきました。
まずは、このような機会を活用して、関係各課の担当職員が理解を深め、庁内における研修等につきましては、県の推進事業や市内状況を見ながら、今後、検討してまいりたいと考えております。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 ぜひお願いしたいと思います。
厚生労働省は、労働者協同組合法の施行にあたって、全国各地でシンポジウムを主催されています。この各地のシンポジウムの様子はインターネット上に動画で公開されておりますし、各地の団体の事例を取材して制作された動画も公開されております。これらを試聴するだけでも十分に労働者協同組合に対する理解を深めることができると思います。また、厚生労働省の担当部署の責任者の方が制度の仕組みを紹介するという動画も公開されております。また、労働者協同組合をテーマとした映画、あるいは労働者協同組合が舞台となっている映画も既に多く制作されています。国内外で作品がございます。さらには講師をお呼びして講演会を開会することもできると思いますし、多くの労働者協同組合、ワーカーズコープやワーカーズコレクティブによる書籍も多岐にわたり出版されております。労働者協同組合についての理解を深める手段は本当に様々ございますので、ぜひ御検討をいただき、また御活用をいただければと思います。
続いて、(3)市の役割と今後の施策について、お伺いします。
今後、この労働者協同組合という制度を市民の皆様に御活用いただくためには、まだまだやはり市によるサポートが不可欠であると思います。起業する場合の一つの選択肢として考えていただくことや、任意団体から始めた市民活動を事業化する際の一つの選択肢として考えていただくことから始まり、設立の手続面での支援はもちろんのこと、起業してからのフォローや伴走型での支援、また、これらのプロセスにかかる費用の一部を助成していただくことなど、いろいろなサポートの在り方が考えられると思います。
実際に広島県広島市では「協同労働」促進事業を立ち上げて、協同労働に取り組む団体の立ち上げや運営の支援に取り組んでいます。本事業が始まったのは平成26年度、2014年度であり、労働者協同組合法が成立する以前のことです。本事業では協同労働を専門とするコーディネーターが事業の立ち上げをサポートするだけでなく、立ち上げにかかる費用の半額を助成し、さらに、立ち上げ後もコーディネーターが事業の運営をサポートしています。事業開始以降、これまでに35もの団体が立ち上がり、それぞれの地域課題の解決に向けた取組を進めています。事業内容も子どもの居場所づくりや障がい児者の支援事業、地域サロンの開設や空き家の管理、不用品の処分代行、さらには農業や休耕田の活用、草刈り、配食サービスやカフェの運営、高齢者の困り事支援、コミュニティ食堂の開設など多岐にわたりますが、いずれもまさに現代の地域社会が抱える課題に取り組んでいるということが分かります。
このような事業を立ち上げて課題の解決に取り組む労働者協同組合を市として支援していくことは、大変重要なことであると思います。課題解決につながるだけでなく、仕事づくりにもつなげることができる、さらに行政の負担も減らすことができるなど幾つもの相乗効果を見込むことができます。
株式会社日本総合研究所の小島明子さんは、このようなプラットホーム事業を通じて、労働者協同組合と地元企業、自治体との連携を強化することを提案されています。自治体側には補助金を交付して労働者協同組合の設立を支援すること、成立後の運営を支援していくことが求められます。自治体からの支援があれば、労働者協同組合を設立するためのハードルを下げることができますし、設立後も持続可能な活動につなげていくことができます。
地元企業との連携については、人材面での相互支援を進めていくことができます。労働者協同組合の側には、人手が足りない場合や経営の知識が不足している場合などがあり、顔の見える地元企業の人材からのノウハウを活用したいというニーズがあります。人材を送り出す地元企業としては何より地域貢献につながること、また、副業、兼業の受入先にもなり得ますし、社員の皆さんが新たなスキルや新たな経験を得る場ともなります。このプラットホームを設立することで、自治体と地元企業、労働者協同組合が連携し、労働者協同組合で活躍する人材が増え、地域の課題を解決し、地域の活性化につなげることができると考えています。
蒲郡市においても、やはり目指すべき取組としては、このレベルのようなところではないかと感じます。労働者協同組合を支援することで、地域の課題の解決につなげていくことができます。市の役割について、お考えをお聞かせいただければと思います。
○青山義明議長 市民生活部長。
◎飯島伸幸市民生活部長 労働者協同組合は、多様な働き方を実現するためのものだけでなく、地域課題の解決に取り組む地域活動団体やNPO法人として活動されている方々にとっても新たな選択肢の一つとして、当該制度の周知が必要なものと捉えております。まずは行政及びがまごおり市民まちづくりセンターをはじめとした中間支援組織において各法人制度の勉強会を行うなど、労働者協同組合に対応した支援体制を整え、設立等における支援を行ってまいりたいと考えております。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 また、今既に展開されている様々な蒲郡市の創業支援の施策の対象として、労働者協同組合による起業も加えていただくということも十分に大事な支援策となり得ると思います。現状は株式会社などに限られている創業支援の枠組みを今後は労働者協同組合にも広げていただき、設立支援だけでなく、事業開始時にかかる費用についての資金的な援助もぜひとも考えていただきたいと思います。今後は起業の一つの選択肢として労働者協同組合を立ち上げるということも当然視野に入ってくると思います。お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○青山義明議長 産業振興部長。
◎池田高啓産業振興部長 本市を含め、蒲郡商工会議所、蒲郡信用金庫、日本政策金融公庫の四つの機関及び協力金融機関で構成するがまごおり創業支援ネットワークで実施する創業支援では、個人、法人を問わず、創業を目指す方を支援するものとなっております。現在のところ実績はございませんが、労働者協同組合の設立につきましても御支援できるものと考えております。
また、本市が実施する事業者を対象とした各種補助制度による資金的支援につきましても、そのほとんどの制度が一般社団法人などその他の法人を対象としていることからも御活用いただけるものと考えております。
ただ、現段階におきまして、お問合せを含め、実績がないことから、補助金要領や市公式ホームページ等で明示はしておりません。
今後につきましては、各種補助制度ごとに精査を実施し、対象となるものにつきましては明示をしてまいりたいと考えております。
以上です。
○青山義明議長 藤田裕喜議員。
◆藤田裕喜議員 分かりました。大変安心いたしました。ぜひ労働者協同組合も補助制度の対象である、支援対象であるという旨について明示をしていただければと思います。
日本労協新聞の前編集長である松澤常夫さんは、「持続可能で活力ある地域社会の実現という全ての協同組合に共通すると言ってもよい目的を持った労働者協同組合法が生まれたことにより、地域を軸に、協同組合の連携は大きく広がる。各種協同組合が持つ様々な資源、専門性や持ち味が生かされ、掛け合わされ、さらに自治体、行政や学校、中小企業などとも結んで、地域全体の発展につながるような取組が進んだら、地域に新たな希望が見出されるようになっていく」と述べています。そして、その上で、「協同労働による仕事起こしは、公共と人と社会とを編み直し、地域と労働を融合させて、日本社会を足元から変革していくだろう」と指摘しています。
また、ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン代表の藤井恵里さんも、「労働者協同組合は、地域活動に関わる主体的な人々を生み出し、助け合い、つながり合う地域社会づくりに貢献する」と指摘しています。自治体として、労働者協同組合を支援していくことは、新しい働き方を広げていくことにつながり、それが新たな地域づくりにもつながっていくことになると私も確信しております。労働者協同組合は、そのような大きな可能性を秘めていると思います。今後の市の取組に期待をしたいと思います。
この件については以上です。ありがとうございました。